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親の遺した借金……相続ではどのように扱われる?

 「遺産の相続」というと、「親の遺した財産を受け継ぐもの」と考える人も多いのではないでしょうか。
 しかし現実には、「プラスの財産」ではなく「マイナスの財産」を相続する可能性もあるのです。
 親の遺した借金をどう考えたらよいのか、それを相続しないようにするにはどうしたらよいのかを解説していきます。

 なお、厳密には「相続人」は「子ども」に限りませんが、ここではわかりやすくするために、「父親が借金を残して亡くなった場合の子どもの立場」にのみ限定して解説していきます。

相続するものはプラスの財産だけではない~借金があることもある

 最初に述べておきたいのは、「日本の現行法では、存命中の親の借金を子どもが肩代わりするべしとはしていない」という点です。
 親が借金をする際に子どもが連帯保証人になっていたり、子どもの名前で親が借金をしていたりする場合(※ただし、子どもに黙って親が借金したケースは除く)は別ですが、そうではない場合においては子どもは親の借金を背負う必要はありません。

 しかし親が死亡した場合はこの限りではありません。

 親が遺した財産は、それがプラスのものであれマイナスのものであれ、「相続をする」と決めた場合は、子どもは親の借金を引き継がなければなりませんし、親の遺した借金の返済義務を負うことになります。

 親が借金をしていた場合でも、プラスの遺産がある場合があります。しかしこのケースでも、「プラスの遺産だけをもらって、マイナスの遺産は引き継がない」ということはできません。財産を相続するのであれば、プラスの遺産もマイナスの遺産も両方とも引き継ぐことになります。

借金と相続、その3つの選択

 ただ、「親が遺した財産がどのようなもの、どのような額であれ、すべてを引き継がなければならない」と考えるのは誤りです。日本では相続について3パターンがあり、そのいずれかを選択することができるようになっています。
 そしてその選択肢のなかには、「親の借金を相続しない」というものも含まれます。

 選択肢は以下の通りです。
 1.単純承認
 2.限定承認
 3.相続放棄
 それぞれ見ていきましょう。

1.単純承認

 もっとも一般的なかたちです。日本における相続のルールは、基本的にはこの「単純承認」のかたちをとっています。
 これは、ごく簡単に言うのであれば、「マイナスの遺産もプラスの遺産もそのまま引き継ぐ」というものです。
 たとえば1000万円の不動産と700万円の現金と2000万円の借金があった場合、1000万円の不動産と700万円の現金、2000万円の借金のすべてを相続することになります。当然、2000万円の借金の返済義務を負うことになるわけです。

2.限定承認

 限定承認とは、「プラスの遺産の限度においてだけマイナスの遺産の弁済を行うという条件付きで相続する」という方法です。
 たとえば、総額1000万円の複数の不動産と700万円の現金と800万円の借金があった場合、まずは800万円を返したうえで、残りの遺産を相続するというものです。
 なお、このようなかたちであるため、「借金の額が、プラスの遺産の額よりも大きい」という場合は選択する経済的なメリットがありません。
 この方法の場合、相続放棄のときには生じなかった税金が生じる可能性もありますが、「思い出の家は残しておきたい」などのように考える場合は一考の余地があります。もっともこの「限定承認」は手間がかかることもあり、選択には慎重さが求められます。

3.相続放棄

 「プラスの財産もマイナスの財産も、両方とも受け取らないよ」というかたちが「相続放棄」です。
この場合、親のプラスの遺産がいくらであれ(またマイナスの遺産がいくらであれ)、相続を放棄することになりますから、相続人にはプラスもマイナスもありません。
 たとえば1000万円の不動産と700万円の現金と2000万円の借金があった場合、「1000万円の不動産も700万円の現金もいらない、その代わり2000万円の借金も背負わない」ということができるのです。
 この「相続放棄」は、特に借金が多い場合に有効です。プラスの財産<マイナスの財産である場合は、相続放棄も考えた方がよいでしょう。ただしこの場合、「思い出の家がある、手放したくない」などの気持ちは考慮されません。当然その「思い出の家」も相続放棄の対象となります。

 なお、このなかで「限定承認」だけはほかの相続人(兄弟姉妹がいる場合はその兄弟姉妹など)を含めて、全員が「限定承認」を行う必要があります。対して、単純承認と相続放棄は、それぞれの相続人がそれぞれの意志で決めることができます。
 繰り返しになりますが、「マイナスの遺産だけを放棄して、プラスの遺産を相続する」ということはできません。
・すべてを一括で相続する
・プラスの遺産の限度で負債を返済することを条件にプラスの遺産を相続する
・すべてを一括で放棄する
の3パターンしかないのです。

相続放棄はいつまでに行うべき?

 さて、「借金の方が大きいので、遺産は放棄したい」と考えた場合、その判断はある程度迅速に行う必要があります。

 遺産を放棄するか否かは、通常、親が死亡してから3か月以内に決めなければならないのです。

 この期間内に相続放棄(あるいは限定承認)を決めなかった場合は、「単純承認をした」とみなされます。つまり、1000万円の不動産と700万円の現金と2000万円の借金があった場合、1000万円の不動産と700万円の現金と2000万円の借金を一度に引き継ぐことになるわけです。
 加えて、3か月を待つ前に、相続財産を売るなどした場合も「単純承認をした」とみなされます。

 「3か月」という期間は、長いように見えて意外なほどに短いものです。親がきちんと財産目録などを作っており、そしてそれが正しいものである場合はよいのですが、そうではない場合、権利証や納税通知書を手掛かりとして遺産の調査に当たらなければなりません。早めに動き出すことをおすすめします。

 なお、「どうしても3か月以内では決められない」という場合は、裁判所に申し立てればこの期間が延長してもらえる場合があります。この相談は裁判所でも受け付けていますが、弁護士を通して行うこともできます。

 「遺産」にはプラスのものもあれば、マイナスのものもあります。きちんと調査して、「自分にとって一番良い相続のかたちはどれか」を考えていきたいものですね。

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