遺言書を書きたいという相談は当事務所に持ち込まれる相続の相談の典型的なものの一つです。遺言には方式が定まっているため,その方式に従わずに書いたものは法的に遺言としての効力を持たなくなります。せっかく書いたのに遺言として使い物にならず,相続人間で揉めてしまっては残念です。平成30年7月6日に民法の一部を改正する法案が参議院で可決され,この方式については若干の変更がありました。平成31年1月13日から施行されます。そこで,今回のコラムでは,改正点に触れつつ,遺言の方式についておさらいしてみます。
遺言の方式は,民法に規定があります。民法967条によると,「遺言は,自筆証書,公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし,特別の方式によることを許す場合は,この限りでない。」とあります。ここから,遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言と特別の場合があることが分かります。
この中で,ポピュラーなのは,自筆証書遺言,公正証書遺言だと思いますので,これを説明します。
自筆証書遺言は,「全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない」(民法968条1項)とされています。つまり,パソコンで作成して印刷したものはダメということです。改正前は非常に厳格であり,自署についての例外はなかったのですが,冒頭で紹介した改正により,財産目録については自署である必要はなくなりました。パソコンで作成して印刷したものや他人が記入したものを添付することが可能になりました。ただし,目録の各ページに遺言者の署名捺印は必要です。
なお,自筆証書遺言については,法務局での保管する制度も民法改正と併せて創設されました。
公正証書遺言は,公証役場に赴くなどして,公証人に遺言書を作成してもらう方法です。入院先の病院に公証人に出張してもらって作成することもあります。公証役場に原本がありますから,遺言書の紛失や改ざんのおそれがないのが強みです。公正証書遺言の作成には,証人2人以上の立ち会いが必要ですが,公証役場に頼めば証人を手配してくれる場合もあります。
以上のように遺言を書くにあたっては方式が決まっており,方式を間違えれば元も子もありません。しかし,やはり大切なことはどのような遺言を遺すか,遺言の内容です。方式と内容については,専門家に相談しながら作成するに越したことはありません。遺言の作成については,当事務所にご相談下さい。
執筆者:山下江法律事務所