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相続人がいない人の遺産はどうなるの?
ご近所のAさんが亡くなりました。Aさんは高齢で身寄りもなかったため、何年も前から私が身のまわりの世話をしていました。Aさんには、300万円の預金があるそうですが、相続人はいません。Aさんからは生前「いつもお世話になっているから、私の財産はあなたにあげる」と言われていましたが、遺言はありません。私がAさんの遺産を受け取ることはできるでしょうか。
本当にAさんの意思に沿っているなら、今回の相談者が遺産を受け取ってもよさそうですが、相談者はAさんの相続人ではないため、やはり当然に受け取ることはできず、一定の手続が必要です。
まず、故人に相続人がいないと思われる場合、利害関係人または検察官は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任をしてもらうよう申立てをします。
家庭裁判所は、相続財産清算人を選任すると、①相続財産清算人の選任・相続人の捜索の公告(6か月以上)と、②相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告(2か月以上)を行います。
①の公告で定める期限(通常6か月)内に相続人が名乗り出ないと、相続人がいないことが確定します。また②の公告で定める期限(通常2か月)内に申出をしなければ相続債権者・受遺者は遺産から支払を受けたり遺産を受け取ることができなくなります。
もし相続債権者・受遺者が請求の申出をした場合、相続財産清算人は、相続財産から相続債権者・受遺者に対して支払を行います。
相続財産清算人による遺産の清算終了後に残った財産は、原則として国庫に帰属することになります。
ただし、故人と特別の縁故があった人(特別縁故者)は、相続人捜索の公告期間経過後3か月以内に、残った財産の全部または一部を分与してもらうよう家庭裁判所に申立てをすることができます。
これは、法律的には相続人ではないけれども事実上相続人と同じように考えてよい者については、故人の財産を受け継ぐことを認めるのが適当な場合もあるという考え方に基づく制度です。
この請求が認められるためには、請求者が「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当し、財産の分与を認めることが「相当」であることが必要です。
今回のご相談のケースでは、相談者とAさんとのこれまでの関わり方の程度によっては、特別縁故者として財産の分与が認められるかもしれません。
もっとも、特別縁故者への財産分与が認められるかどうかは家庭裁判所の判断によるもので、必ずしも認められるとは限りません。
相続人ではない人に自分の財産を渡してあげたいと思う場合には、やはり遺言によりその意思を明示しておくに越したことはありません。
相続にまつわるトラブルやお悩み、遺言の作成等に関するご相談は、当事務所へお気軽にお問い合わせください。