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相続

山下江法律事務所

 今日は「相続」のお話です。 

 「うちは財産がないので,自分には相続なんて関係ない!」と思われている方は,是非お読みいただければと思います。

 相続は,死亡によって開始します(民法882条)。失踪宣告※(民法30条)を受けた場合も,この宣告を受けた者は死亡したものとみなされますので(民法31条),相続が開始することになります。 

 そして,相続が開始すると,亡くなった方(以下「被相続人」と言います)の財産法上の地位(権利義務)を,特定の者(以下「相続人」と言います)が受け継ぐことになります。 

 ここで注意すべきことは,被相続人の財産法上の「義務」も,相続人は受け継ぐことになるという点です。つまり,被相続人の積極財産(不動産・預金などのプラスの財産)だけでなく,消極財産(借金などのマイナスの財産)も,相続人は受け継ぐことになります。被相続人が,多額の借金(消極財産)を残して亡くなった場合,相続人は被相続人の借金を返済しなければならなくなるのです。

 では,このような事態を避けたいときは,どうしたらいいのでしょうか。

 「相続放棄」をすればいいのです。相続放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされることから(民法939条),被相続人の借金(消極財産)を受け継がなくて済むのです(相続放棄をすると,被相続人の積極財産も受け継がないことになってしまいますが…)。

 相続放棄をするには,相続人が,自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条,938条)。相続人が「相続放棄します!」と単に宣言しただけでは,相続放棄の効果は生じませんので,前記の3か月の期間内に,忘れずに家庭裁判所に相続放棄の申述をしましょう。

 なお,相続人が被相続人の財産の全部又は一部を処分したときは,相続を単純に承認したものとみなされ(民法921条),その後に相続放棄をすることができなくなりますので,ご注意を。
相続手続や相続放棄の申述については,まずは当事務所にご相談下さい。

※[失踪宣告について]
 失踪宣告とは,ある者(不在者)について,生死不明の状態が続き,死亡した確率が高いと考えられる場合に,一応その者の死亡を擬制する(死亡したものとみなす)制度です。
 失踪宣告には,下記の2種類がありますが,いずれも利害関係人(不在者の配偶者,父母,相続人など)が,家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをする必要があります。

① 普通失踪(民法30条1項)
   不在者の生死が7年間明らかでないとき

② 危難失踪(民法30条2項)
   戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者,その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,それぞれ戦争が止んだ後,船舶が沈没した後,またはその他の危難が去った後,1年間明らかでないとき

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 田中伸

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