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ペットに遺産を残せるのか

山下江法律事務所

目次

ペットに遺産を残せるのか

 ある資産家の不可解な死がワイドショーを賑わせたことがありました。その資産家は、派手な女性関係で有名でしたが、愛犬のことを溺愛していたそうで、生前「愛犬に自分の全財産を譲る」などと豪語していたそうです。

 では、実際にペットに遺産を残せるのでしょうか。

 「愛犬に財産を残すという内容の遺言を書けばいいじゃないか!」というようなことを思いつく方がいるかもしれません。相続人以外の第三者に財産を残すことを遺贈といい、民法964条で「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と書かれています。そうすると、ペットに財産を残せそうな気もします。

 しかし、民法が遺言の相手方として想定しているのは、あくまで「人」です。いかに愛犬であっても、民法上は「物」として扱われてしまうのです。当然、「物」に対して財産は残せません。

 では、自分の死後、ペットは放置されてしまうのでしょうか?何も対策はないのでしょうか。

 このような場合、「負担付遺贈」という方法を取ることができます。この方法では、第三者に財産を渡す代わりに義務を負担させることができます。この義務の内容として、例えば散歩の回数やペットフードの指定などを細かく指定していれば、自分の死後も安心できるのではないでしょうか。ただし、遺贈は放棄が可能ですので、あまりに負担だけが大きいと放棄されてしまうかもしれません。また、遺産だけ受け取って世話をしないこともあるかもしれません。

 このようなリスクへの対策として、遺言内容を実行に移す権限を持つ「遺言執行者」を指定しておきましょう。約束を守らない場合などに、この遺言執行者が家庭裁判所に申立てて、遺贈を取り消すことができます。もっとも、あいまいな点が残らないよう、受遺者(遺贈を受ける人)とは生前に負担の内容について話し合っておいた方がいいでしょう。

 遺言執行者については裁判上の手続きを行う可能性があるため、専門家に任せた方が安心と言えます。遺言の作成や遺言執行については、お気軽に当事務所の弁護士にご相談下さい。

執筆者

宮部明典

呉支部長/弁護士(相続チームリーダー)

共著書に『相続・遺言のポイント56』。税理士など他士業と連携しワンストップで相続の総合解決を目指す(一社)はなまる相続監事。事務所全体での相続に関する相談件数は年間約500件に及ぶ
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