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養子縁組を解消した! 相続はどうなるのか

山下江法律事務所

 親子としての血縁関係がない両者が、法律に従い「親子」の関係になる制度として「養子縁組」があります。
これは「里親(一定期間、あるいは一時的に子どもを保護し、また育てる制度)」とは明確に区別されるものであり、「相続」にも関わってきます。
 ここでは「養子縁組」に焦点を当て、養子縁組と相続権についての解説をしていきます。

養子縁組とは何か

 「養子縁組」とは、簡単にいえば「親子としての血縁関係のない両者が、法律に従って『親子』になる制度」をいいます。

 もっともわかりやすいのが、「小さな子ども(成人に満たない子ども)を、夫婦が引きとって養子にする」というものでしょう。引き取った子どもと夫婦の間で養子縁組をし、一緒に暮らしていく……というものです。
 また、同性パートナーを持つ人たちが養子縁組という制度を選択することもあります。現在はパートナーシップ制度などが導入されて見直しも行われているものの現在の日本では同性婚を法的に認める制度は整っていません。そのため、同性パートナーに遺産を渡したいと考えたり、医療行為の同意や税制上の優遇を受けたりするために「養子縁組」というかたちをとったりすることもあります。

 養子縁組は、「子どもと大人」だけでなく、「大人同士(成人同士)」でも結ぶことができるのです。

 さてこの養子縁組には、大きく分けて2つの種類があります。
 ひとつは「普通養子縁組」と呼ばれるもので、もうひとつは「特別養子縁組」と呼ばれるものです。この2つはまったく意味が異なります。

【普通養子縁組(制度)】

 血のつながった親(ここではこれ以降「実親」とします)の関係を切らずに、養親との親子関係を成立させるものです。この場合、子は「実親」と「養親」の2組の親を持つことになります。
 小さな子どもの場合、「実親と縁を切らないまま、養親が親権を持つ」などのようなかたちをとることになります。
 普通養子縁組は、「家業の継続」なども目的に含む制度であるため、

・養親が成人していること
・養子が、養親にとって直系の尊属ではないことあるいは養親よりも年上でないこと

などが求められますが、養子と養親、双方の合意があるのであれば比較的簡単に結ぶことができます。
 また、普通養子縁組の場合は、養子は「実親と養親、両方から遺産を受け継ぐ権利を持つこと」にも注目してください。
 成人同士の養子縁組の場合は、原則としてこちらの「普通養子縁組」となります。

【特別養子縁組(制度)】

 特別養子縁組では、養子と実親の関係が断ち切られます。
 養子は養親とのみ親子関係を持つわけで、実親との親子関係は断絶します。
 これは原則として、

・子どもが15歳未満である
・夫婦が共同で養親になること
・実親の同意がある
・実親による養育が著しく困難または不適当その他特別の事情がある場合
・家庭裁判所によって、「特別養子縁組を結ぶにふさわしい環境である」と認められること
・養親の片方が25歳以上であり、かつもう片方が20歳以上であること

などの条件をクリアする必要があります。

 特別養子縁組の場合は普通養子縁組とは異なり、「子どもを健やかな環境で育てること」が目的のうちのひとつとなっています。特別養子縁組では実親との関係を解消することになるため、実親の遺産を相続する権利は失われます。ただし、養親の遺産を相続する権利が発生します。

養子縁組を解消すると相続権もなくなる

 養子縁組をした場合、養子にも実子にも同様の遺産相続権が生まれます。
 「養子なのだから、実子よりも遺産の取り分が少なくなる」などのようなことはありません。法定相続分の割合は、まったく同じです。たとえば「父親が死亡し、母親と実子1人と養子縁組済みの子ども1人が遺された」という場合、母親が2分の1を、実子が4分の1を、養子縁組の子どもが4分の1を引き継ぐことになります。

 ただし、養子縁組を解消した場合は相続権もなくなります。

 普通養子縁組の場合、養子縁組の解消(「離縁」ともいわれます)は比較的容易です。

1.協議離縁
2.調停離縁
3.審判離縁
4.裁判離縁

 なお、養子縁組には「相続をするための制度」という側面もあります。このため、養子縁組をしている片割れが亡くなったとしても、当然養子縁組は維持されます。片方が亡くなった後に養子縁組を解消しようとするのであれば、別途、家庭裁判所を経て役所に届けを出す必要があります。

 当然のことではありますが、養子縁組を解消しても実親の遺産の相続権は残ります。

養子縁組は解消できないケースも……

 普通養子縁組でも、裁判をしなければ養子縁組を解消できない場合もあります。
 しかし特別養子縁組の場合は、もっと状況は複雑です。

 「お互いの同意さえあれば、協議離縁というかたちもとれる」としている普通養子縁組とは異なり、特別養子縁組の離縁は原則として認められていません。

 特別養子縁組を組んだ場合、養親側からは養子縁組解消の申し出を行うことはできません。特別養子縁組解消のための申し出を行えるのは、

1.養子
2実親
3.検察官

だけです。

 またその成立条件も非常に厳しいものです。

 1.養親から養子に対して、虐待や悪意の遺棄などがあり、養子を適正に育てていないと判断されるに足る事由があること
 2.実親がきちんと監護できる状況が整っていること
 3.養子の利益を守るために必要と判断されること

 また、この結果を出すのは裁判所です。

 このため、たとえば「長く子どもができなくて特別養子縁組をしたが、その後に実子が生まれた。特別養子縁組をとりやめて、実子にのみ遺産を受け継がせたい」などのようなことはできないようになっているのです。また、養親が病気になった場合なども、特別養子縁組を解消することはできません。

 同じ「養子縁組」といっても、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」では条件も離縁の方法もまったく異なります。そしてこの違いは、遺産相続においても表れてくることになります。養子縁組を考えているご家庭の場合は、「今、現在」だけでなく、「これから先の未来」にまで思いを馳せて、検討していく姿勢が求められます。

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