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数次相続が起きたときに私たちにできること

山下江法律事務所

 人生には、思いがけないことも起こるものです。また不幸が立て続けに起きてしまうこともあります。
 悲しみや憤り、やるせなさで心がいっぱいになってしまうこともありますが、それでも私たちは、法律に基づき適切に遺産を分配していかなければなりません。

 今回は、このような状況と深く関わる「数次相続」について取り上げていきます。

 数次相続とは何なのか、数次相続が起きてしまった場合の遺産相続はどのようにすればよいのか、そして数次相続の注意点について解説していきます。

 なお、本文中に出てくる続柄は、特筆しない限りはすべて「故人から見た続柄」だと考えてください。

数次相続とは、遺産の分割手続終了前に相続人が亡くなってしまう状態をいう

 通常、人が亡くなった場合は法定相続人に遺産が渡されることになります。たとえば配偶者と子ども2人が存命中であるならば、配偶者に2分の1の財産が渡され、子どもたちがそれぞれ4分の1ずつ遺産を受け取ることになります。

 遺産の分配が終わった後に、遺産を受け継いだ人が亡くなれば、また同じように遺産の分配が行われます。これが原則です。

 しかし不幸にも、「遺産分割の相談をしている間に、遺産相続人が亡くなってしまった」というケースもあります。
 このような場合は「数次相続(すうじそうぞく)」となります。

 もう少し具体的に見ていきましょう。
 たとえば、故人が2020年の9月21日に亡くなったとします。遺産を相続するのは、妻と2人の子どもだとします。しかし葬儀やお墓のことで話し合っていてまだ遺産の話ができていない(あるいは完結していない)2020年の9月30日に、故人に次いで妻がショックで亡くなってしまうこともあります。
 このようなときは、「故人の遺産の分割がまだ終わっていないにも関わらず、(遺書がない限りは)遺産の2分の1を引き継ぐはずの妻が亡くなった」という状況になるのです。

 この場合、単純に遺産を引き継げばよいというわけにはいきません。妻の死を考慮しながら、遺産相続について考えていく必要があります。

 なお「数次相続」とは、「2回(以上)分の相続が重なること」からこう名付けられたとされています。

数次相続が起きてしまった場合の相続の考え方

 数次相続の基本は、「亡くなった2人の遺産を、子どもたちが引き継ぐこと」となります。

 まず、1回目の相続が行われます。
 この場合、妻が2分の1の遺産を引き継ぎ、子どもたちには4分の1ずつの遺産がいくことになります。
 そしてその後に2回目の相続が行われます。
 この場合、妻が引き継いだ2分の1の遺産を子どもたちが2分の1ずつ(故人の遺産全体からみると4分の1ずつ)受け取ることになります。
 結果として、子どもたちが「両親の遺産を、2分の1ずつ引き継ぐ」というかたちになります。
 すべての人が血縁関係にあり、また遺言書もなかった場合は、数次相続でもそれほど複雑なことにはなりません。また養子縁組を結んでいた場合もこれに準じます。

 しかし数次相続は、時に非常に複雑な状態を呈すことになります。

 たとえば、「妻には連れ子があった。そして1回目に亡くなった故人は、その連れ子とは養子縁組をしていない」という状況です。
 養子縁組をしていない場合、連れ子には故人の遺産は入りません。
 そのため、1回目の遺産相続では、

・妻2分の1
・実子1に4分の1
・実子2に4分の1
・連れ子にはゼロ

という割合で分けられます。

 ただこの直後に妻が亡くなった場合、妻の財産は子どもたちに等分に与えられます。
 このため、子どもたちはそれぞれ(1回目に亡くなった故人の資産として換算した場合)

・実子1に6分の1
・実子2に6分の1
・連れ子に6分の1

が入ることになります。

 結果的に、

・実子1には12分の5
・実子2には12分の5
・連れ子には12分の2(6分の1)

の財産が遺されるというわけです。

数次相続の注意点

 「数次相続」と「代襲相続」はまったく違うものです。

 代襲相続とは、「本来は遺産を受け継ぐべき人がすでに亡くなっている場合、その子どもに遺産が引き継がれる」という制度です。
 たとえば、「実子1はすでに亡くなっているが、実子1の子どもがいる」という場合は、実子1の子どもに4分の1(本来実子1が受け取るはずだった割合)が渡されることになります。
 なお代襲相続は、兄弟姉妹の場合は、甥・姪までに限られ,甥・姪の子どもには代襲相続の権限はありません。

 ちなみに、「養子になった者」は実子と同様の遺産相続権を持ちえます。ただし、「養子になった者の子どもが代襲相続ができるかどうか」については、「いつ養子の子どもが生まれたか」によって変わってきます。養子になった後に生まれた子どもならば代襲相続の対象となりますが、養子になる前に生まれた子どもの場合は代襲相続の対象とはなりません。

 代襲相続は「遺産を引き継ぐべき者がすでに亡くなっていたとき」に起こるものですが、数次相続は「遺産を引き継いだ者が、遺産の整理をする前に亡くなったこと」を表すものです。
 この2つは混同しないようにしたいものです。

 数次相続となるシーンでは、残された人は立て続けに大切な人を亡くすことになります。そのため当然動揺もしますし、混乱もします。遺産配分がどのようになるかの心配はもちろん、「いったいどのようにして分けていけばいいのか」で混乱することもあるでしょう。単純な数次相続ならばそれでも混乱は起きにくいと思われますが、養子などが絡んでくる場合はなお複雑になります。

 「自分たちで話し合っていても、決着がつきそうにない」
 「結局どんな風に分ければよいのかが分からなくなってきた」
 「だれの言っていることが正しいか不明」

という場合は、弁護士事務所などに足を運んでください。状況を整理し、法律にのっとった分割方法を、プロの冷静な視点でお教えします。

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