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実家を相続したくないときは相続放棄さえすればOK?
親に負債があるかもしれないので相続をしたくない。そんなときは、相続放棄の手続きをすることで相続財産(負債を含む)を取得しなくてすみます。
相続放棄とは、被相続人(親など)の財産に対する相続権の一切を放棄することです。対象になるのは全ての財産なので、預金や不動産等のプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。そのため、負債が多いときなどはメリットがあります。
それでは以下のような場合、相続放棄さえすればいいのでしょうか?
「私は現在東京で、夫と二人の子と住んでいます。私は、一人っ子で、父はすでに他界しています。この度母も亡くなりました。実家は広島の山間部にあり、実家を相続しても維持・管理が大変なのでできれば相続したくありません。相続放棄さえしておけば問題ないのでしょうか。」
確かに、相続放棄をすれば相続財産を取得しなくて済みますが、相続放棄さえすればいいかと言えばそうとも言い難いところです。
民法には、相続放棄後の管理義務についての規定があります。すなわち、相続放棄の時点で相続財産を現に占有しているときは、相続人か相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければなりません。後順位の相続人の誰かが相続しない限り、その土地は被相続人(亡くなった人)の名義のままです。そして、相続放棄が認められて固定資産税を支払う義務からは逃れられても、次の引継ぎ先や管理者が決まるまでは放棄した不動産の管理義務はそのまま残るのです。
ではどうすればいいのかというと、まず相続放棄をした方や利害関係者が家庭裁判所へ「相続財産清算人」の選任申立てを行う必要があります。相続財産清算人が選任されると、相続財産の管理義務は相続財産清算人に移ります。ここまでの手続きが終わるとようやく不動産の管理責任から解放されるのです。
なお、相続財産清算人の選任申立てには、通常数十万円以上の費用(裁判所への予納金や手続き費用等)が必要になります。特に、遺産に換価困難な不動産が含まれ、その他の積極財産は乏しい場合、予納金の額は高額となることが想定されますので注意しましょう。。
相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3カ月以内に行う必要があります。相続財産にはどのようなものがあるのか、相続放棄をするべきかどうか、相続放棄をした後に手続きをする必要があるかなど検討事項は多岐にわたります。相続発生後の手続きについては早期に弁護士に相談することをお勧めします。
なお、換価困難な土地について相続してしまったという場合、令和5年4月27日から、相続土地国庫帰属制度が開始しました。要件はかなり厳格ですが、検討の余地があると思います。詳しくは法務省のホームページ(法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp))をご参照ください。