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父死亡1年後に借金の相続放棄はできるか

山下江法律事務所

なやみよまるく~江さんの何でも法律相談~
2017年12月4日放送分
父死亡1年後に借金の相続放棄はできるか
相談者 62歳/女性

Q: 今月は「相続」「遺言」をテーマに、番組に寄せられましたご相談に、法律の専門家であるお立場からお答えをいただきます。
江さん、今日も、よろしくお願いします。

A: はい、よろしくお願いします。

Q: 62歳の女性の方からの質問のメールがきています。

「父が85歳で死亡してから1年くらい経ちます。
父は田舎に小さな家を持っていて、私はそれを相続で取得しました。
たぶん1000万円弱の価値があると思われます。
この度、父に対する債権者であるという会社から、父への貸付金が約2000万円あるので支払ってくれとの請求が来ました。
そのような借金があるとは夢にも思っていませんでした。
そういうことが分かっていたら、父から家を相続により取得することはなかったと思います。
今から相続放棄することはできませんか。」

という内容です。
借金が分かったから相続放棄をするということはありうることですよね。
江さん、この場合はどうなるのでしょうか。

A: まず、相続放棄という制度について簡単に説明しましょう。
民法は、相続が発生した場合に、相続をするか否かについて相続人に次に述べる3つの選択肢を与えています。
すなわち、相続財産を負債も含めて全面的に相続する・・これを「単純承認」といいます。 
2つ目は、相続した資産の範囲内で債務などの責任を負うという「限定承認」。
そして3つ目が、相続財産を全面的に拒否する「相続放棄」です。
相続人は、これらのどれかを選ぶ必要があります。

Q: なるほど、単純承認、限定承認、相続放棄の3つがあるのですね。

A: はい、そういうことです。
これらのどれを選ぶかについて、相続人は相続が開始したことを知った時から3か月以内に決めなければなりません。

Q: 3か月以内ですか・・・
結構短いのですね。

A: はい、短いです。
相続をめぐる法的関係を早期に確定させるためと思われます。
この「3か月間」のことを「熟慮期間」といいますが、特別の事情があれば、熟慮期間の伸長を裁判所に申し立てできます。
すなわち、被相続人が会社を経営していて相続財産の構成が複雑な場合や、遺産が海外や各地に分散していて調査に時間がかかるような場合です。

Q: 分かりました。
さて、ご相談の件ですが、被相続人死亡からすでに1年たっているようです。
相続開始を知ってから3か月を経過しているからもう相続放棄も出来ないということに
なるのでしょうかね。

A: 結論的には、本件の相続放棄は原則無理と思います。
が、その理由は若干異なることになると思います。

Q: どういうことでしょうか。

A: はい。
説明しましょう。
最高裁の裁判例ですが、被相続人の相続財産はまったくないと信じていたところ、熟慮期間の3か月を過ぎて、被相続人に対する債権者から債務の支払請求が来た事案について、熟慮期間についてですが、「3か月以内に相続放棄をしなかったのは相続財産がまったく存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、相続財産(この場合には借金ですが)があると認識したとき又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である」としたのです。
すなわち、相続放棄をしなかったのは負債があるとは思っていなかったからなので、熟慮期間は負債の存在を認識したときから起算すべきということにしたのです。

Q: うん?
相談者の場合も、負債を知ったときから熟慮期間が計算されるということなら、この相談者の場合も相続放棄ができそうに思いますが・・・

A: そのように思われるかも知れませんが、相談者の場合にはさっき述べた最高裁判決とは異なる事情があります。
すなわち、相談者が父の家を相続で取得していることです。
民法には、相続財産を処分した場合には、単純承認したものとみなすという条文があるのです。
相談者の場合は、父の家という相続財産を相続で取得しているので、これが「相続財産を処分」したことに該当することになるのです。
単純承認した以上は、もう相続放棄はできませんよということですね。

Q: はは~そういうことですか。

A: 再度確認しましょうかね。
先ほどの最高裁判所の判例では、相続人は相続財産がまったくないと信じていた場合です。
相談者の場合は、相続財産がありそれを相続で取得していたが、後になって、借金が判明した場合です。
両者は異なるということです。
原則は以上ですが、ただ、後者の場合についても、各案件の詳細な事情により逆の判断が裁判所から出ることもありえます。

Q: そうですか。
相続があった場合は、いろいろ調査してどうするかを判断しなければならないんですね。

A: そういうことです。
相続が発生した場合、疑問点などありましたら、当事務所までお気軽にご相談に来ていただければと思います。

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