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親の面倒を見るからあなたは相続を放棄せよと言われた。

なやみよまるく~江さんのなんでも法律相談~
2014年12月22日放送分
親の面倒を見るからあなたは相続を放棄せよと言われた。
相談者:56歳/女性

Q: 今月は、「相続・遺言」をテーマに、番組に寄せられましたお手紙やメールによるご相談に、法律の専門家であるお立場からお答えをいただきます。
今日のご相談は56歳、女性の方からです。

「私と姉、弟には、81歳になる父親がいます。
母はすでに他界しました。先日、姉から『今後、自分が父の面倒を見るから、あなたは相続を放棄して欲しい。』と言われ、その旨が記載されている書面に、署名・押印することを要求されています。
同じように、弟にも話をしたようで、弟はその要求をのみ、書面に書名・押印したと聞きました。
私は、財産を充てにしていたわけではないのですが、いざ、このように頭ごなしに要求されると、納得がいかず、どうしようか悩んでいます。
最終的には自分で決めなければならないことはわかっていますが、このような場合、応じなければならないものなのでしょうか?」

という内容です。
お姉さま、どうしたのでしょうかね?
しかし、こんなドラマで見そうなことが、本当にあるんですね。
さぁ、江さん、今週もよろしくお願い致します。

A: はい、よろしくお願いします。

Q: 早速ですが、今回の相談内容、身内での話しなので、結構大変そうですね。
まず、相談者の方は、お姉さまの要求に応えたくないという風に判断していいですかね?

A: そうですね。
お姉さんの要求に応じなければならないのでしょうか?という風に書かれていますから…
まず、相談者は、お父様が亡くなられた際には、お父様の相続人となり、その相続財産に対して、一定の割合の請求権を持っています。
これは、生前、お父様の面倒をみたかどうかには関係のない、この方本人の権利です。ですから、お姉さんといえども、この権利を否定することはできませんので、相続を放棄してほしいという要求に応じる法的義務はありません。

Q: そうですよね。
ところで、このメールにもあったように、弟さんは、お姉さんの要求に応じて、
相続放棄の内容の書いてある書面に、署名・押印したということですが、この場合、
お父様の相続財産に対する弟さんの権利は、すでになくなったのでしょうか?

A: これはきっと、お姉さまが、自分で作られた書面なんでしょうね。
相続放棄というものは、法律上、決められた手続きを踏まないと効果を生じませんので、
この書面に署名・押印したからといって、相続放棄をしたことにはなりません。
そもそも、相続放棄は、お父様が亡くなってからでないとできません。

Q: そうなんですか。
お父様の生前には、お父様の相続人となると思われる人が相続放棄をすることは法律上できないのですね。

A: そういうことです。
相続放棄は、相続の開始、要するにお父様が亡くなられて、または亡くなられたのを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。
ですから、弟さんが署名・押印したという書面は、無効ということになります。

Q: では、被相続人の生前に、一部の相続人に相続財産を放棄させる方法って、ないのでしょうか?

A: そうですね。
遺留分放棄の手続きがあります。
遺留分というのは、遺言でも侵害することのできない、相続人に最低限残さなければならない財産のことです。
例えば、お父様が遺言で、すべての相続財産を他の相続人に取得させるように指定した場合にも、一定のほかの相続人が、父親と血がつながっていることの故に取得できる一定の割合の相続財産である、ということは、何度かお話しましたね。
この遺留分の権利を、相続開始前に放棄する、あるいは放棄させる手続きはあります。

Q: そうなんですか、その方法を教えていただけますか?

A: 遺留分の権利を放棄する場合、その時期が相続開始前なのか、それとも後なのかによって、放棄の仕方が変わってきますので、まずはそこを覚えておいてくださいね。
相続開始後に遺留分の放棄をするのは比較的簡単です。
というのも、特にこれといった手続きは必要ないため、遺留分を侵害している相続人や
遺言により相続を受ける者に対して「遺留分を放棄します。」と意思表示さえすれば、有効なものとしてみなされます。
もっとも、遺留分請求権は相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年で時効に係りますから、何もしなくても1年経過すれば権利は消滅します。
次に、相続開始前の遺留分放棄については、一定の手続きが必要です。というのも、
家庭裁判所の許可が必要となるからなんですね。
相続開始前に遺留分を放棄する場合、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺留分放棄許可審判の申立書」を申請します。
申請が受理された後は、家庭裁判所から審問期日の連絡がありますので、指定日に出頭し、面接を受けることになります。
相続開始前の遺留分放棄は、自らの権利を放棄するものですから、真意に基づいたものかどうかを裁判所が確認するということです。

Q: そういうことですか。裁判所の面接を受けて許可をもらうことになるのですね。
相続放棄は、被相続人が死亡していないと放棄することはできない。遺留分については、生前に放棄することはできるが、一定の裁判手続きが必要となる。ということですね。
相談者のお姉さまは、何を思って、妹弟に「相続放棄をして欲しい」と言っているのか、
このメールでは確認がとれませんが、お姉さんが作成した書面では、効力がないこと、基本的には、お父様が亡くなられてからでないと、手続きができないことなど、お話された方がよさそうですね。

A: そうですね、効力のない書面に署名・押印しても、あとあとトラブルになるだけですから、ここはきちんと姉妹で会って、本音で話し合いをされることをお勧めします。

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