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放蕩息子に相続させたくない

山下江法律事務所

なやみよまるく~江さんの何でも法律相談~
2011年4月18日放送分
放蕩息子に相続させたくない
相談者 76歳男性

Q: 私の放蕩息子への相続のことで相談があります。
息子は大学に入ってから遊びを覚え、賭け事や女遊びをし、借金を作っては私に支払わせ、大学中退後も就職もせずにブラブラして、親への無心を繰り返しています。
ほかの子どもたちは特に問題がないのですが、この放蕩息子には相続させたくない!と思っています。
相続人には、血がつながっているというだけで、一定部分を取得できる「遺留分」という制度があるので遺言で、相続させないようにすることは無理。と聞いたことがあります。何か、いい方法はないのでしょうか?

A: まず「遺留分」というものについて、若干の説明を補足しておきましょう。

通常、被相続人が、ある推定相続人に対して遺産を相続させたくない場合は、遺言により他の相続人に遺産を相続させるようにします。しかし、遺言書では遺産を取得できないことになっていても、その相続人は、被相続人と血が繋がっているというだけで、一定の割合について遺産を取得できる制度があります。それを「遺留分」と言います。

例えば、夫婦に子どもが1人いて夫が死亡した場合は、その相続人は妻と子どもになります。
ところが、生前、夫が妻にほとほと迷惑を受けたので、妻には相続させたくないと思って、遺言書にすべてを子どもに相続させると記載しても、妻は婚姻関係にあったので、自分の権利を主張することができます。
妻の相続分はもともと2分の1です。遺留分というのはその半分、すなわち遺産の4分の1を、遺留分減殺請求権を行使することにより、最終的に取得できる訳です。

 逆に、子どもには相続させたくない、すべて妻に相続させると夫が遺言書に記載した場合でも、子どもにはもともと相続分が2分の1あり、その遺留分はさらにその2分の1になりますから、4分の1が遺留分となります。
 例えば子どもが2人いた場合には、遺留分にたいして半分ずつ権利がありますから、8分の1が遺留分となります。

さて、遺留分の話はこの程度にします。

こうした遺留分制度がある一方、今回の相談のような場合、「廃除」という制度があります。

これは、被相続人、すなわち相談をくださったご本人にあたりますが、この方からみて、推定相続人であるが、その者に相続させたくないと考えるような非行があり、かつ、被相続人がその者に相続させることを望まない場合に、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所が審判、または調停によって、その者の相続権を剥奪するという制度です。
このような制度を利用されることも方法のひとつです。

Q: この「廃除」が認められるためには、どのような事情があればいいのでしょうか?

A: ひとつには、被相続人に対する虐待、または重大な侮辱が挙げられます。
例えば、親をいつも「バカオヤジ」とののしり、時にはえり首を捕まえて引きずり回すような態度です。これは、虐待・侮辱に該当します。
あるいは、その他の著しい非行です。

Q: 今回の場合は廃除理由に該当しますか?

A:そうですね。最終的には家庭裁判所が決めるのですが、おそらく該当する可能性が高いと言えます。

Q: 廃除理由が該当するかどうかというのは、家庭裁判所で決定されるのですか?

A: はい、家庭裁判所に申し立てをして、家庭裁判所が、虐待・侮辱・非行の程度、そして家庭の状況、被相続人側の責任の有無、その他一切の事情を考慮した上で、決定します。

Q この「廃除」に該当するほどの非行でない場合は、どうしようもないのでしょうか。他に方法はないのでしょうか。

A 放蕩息子である推定相続人が納得するかどうかの問題はありますが、事前に遺留分放棄の手続きをしておくことです。

すなわち、この放蕩息子に対し「あんたには、借金の支払いなど大変な金額をすでにやっているので、もう遺産はいらないよね。だから、遺留分を放棄してもらう」と説得することです。
ただ、強引に行うことはできず、その息子さんが真意で同意したのかなどを確認する必要があるので、やはり家庭裁判所に申し出て、その許可が必要となります。

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