配偶者短期居住権とは?いつまで住める?要件・期間・注意点を弁護士がわかりやすく解説
配偶者が亡くなった後、「夫名義(妻名義)の自宅にこのまま住み続けることができるのだろうか」と不安を抱く方は少なくありません。
特に、自宅を相続する人が配偶者以外の相続人となる場合や、自宅を売却して遺産分割を行う場合には、残された配偶者の住まいの確保が大きな問題になります。
このような場面で、残された配偶者の生活を保護するために設けられた制度が「配偶者短期居住権」です。
今回は、相続問題を取り扱う弁護士が、配偶者短期居住権の概要や要件、居住できる期間、注意点についてわかりやすく解説します。
目次
配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた建物に住んでいた配偶者が、相続開始後も一定期間、その建物に無償で住み続けることができる権利です。
高齢の配偶者にとって、突然住居を失うことは大きな負担です。
そこで民法は、相続開始後の生活基盤を保護するため、一定期間は安心して居住を継続できるよう配偶者短期居住権を認めています。
特別な契約や遺言がなくても、要件を満たせば法律上当然に発生する点が大きな特徴です。
なぜ配偶者短期居住権が創設されたのか
例えば、夫が死亡し、夫名義の自宅を長男が相続したケースを考えてみましょう。
相続制度上は、自宅の所有者となった長男が建物に対する権利を取得します。
しかし、長年その家に住み続けてきた妻に対して、ただちに退去を求めることが認められてしまうと、住まいを失った妻の生活は著しく不安定になってしまいます。
相続手続、財産調査、遺産分割協議などは数か月以上かかることも珍しくありません。
その間の生活を守るために設けられた制度が配偶者短期居住権です。
配偶者短期居住権が認められる要件
配偶者短期居住権が成立するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
1.法律上の配偶者であること
対象となるのは法律婚の配偶者です。
そのため、
- 妻
- 夫
は対象となりますが、
- 内縁の妻
- 内縁の夫
- 事実婚のパートナー
には認められません。
2.被相続人所有の建物に住んでいたこと
被相続人が所有していた建物であることが必要です。
例えば、
- 夫名義の自宅
- 妻名義の自宅
- 被相続人が共有持分を有していた建物
などが対象となります。
3.相続開始時に居住していたこと
被相続人が亡くなった時点で、無償で生活の本拠として現実に居住していたことが必要です。
過去に住んでいたというだけでは認められません。
住民票だけを置いていたようなケースでは、実際の生活実態が問題となることがあります。
いつまで住み続けることができるのか
最も多い質問が、「結局いつまで住めるのか」という点です。
遺産分割が行われる場合
配偶者短期居住権は、「遺産分割により建物の帰属が確定した日」と「相続開始から6か月を経過した日」のいずれか遅い日まで存続します。
例えば、
- 1月に相続開始
- 3月に遺産分割成立
というケースでも、少なくとも7月までは居住を継続できます。
一方、
- 1月に相続開始
- 翌年1月に遺産分割成立
の場合には、遺産分割成立時まで住み続けることができます。
遺言で取得者が決まっている場合
遺言などにより建物を取得する人が決まっている場合は、その取得者が配偶者に対して権利消滅の申入れを行うことができます。
その場合、申入れから6か月が経過するまでは住み続けることができます。
配偶者短期居住権が問題となる典型例
ケース1 長男が自宅を相続する場合
父が死亡し、
- 母(配偶者)
- 長男
が相続人となったケースです。
遺産分割協議の結果、自宅は長男が相続することになったとしても、母は直ちに退去しなければならないわけではありません。
配偶者短期居住権により、一定期間はそのまま住み続けることができます。
ケース2 自宅売却を予定している場合
相続人全員が、「自宅を売却して売却代金を分けよう」と考えている場合でも、配偶者は一定期間保護されます。
売却先を探したり、転居先を決めたりする時間を確保することができます。
ただし、第三者対抗力がないため、建物取得者に対する関係では、当然に占有権原を主張することができません。
ケース3 遺産分割がまとまらない場合
相続人同士の意見が対立し、遺産分割協議が長期化するケースもあります。
そのような場合であっても、配偶者は当面の住居を失うことなく協議の結果を待つことができます。
配偶者短期居住権の注意点
第三者に貸すことはできない
配偶者短期居住権は、自ら居住するための権利です。
そのため、
- 賃貸住宅として貸し出す
- 民泊として利用する
- 知人に使用させる
といった利用は原則として認められません。
建物を適切に管理する必要がある
配偶者は建物について管理義務を負います。
それゆえ、建物を損傷した場合には、短期居住権の消滅や損害賠償の問題が生じる可能性があります。
永続的に住める権利ではない
「短期」という名称のとおり、永久に住み続けることができる制度ではありません。
あくまで相続直後の住まいを確保するための暫定的な保護制度です。
そのため、
- 今後どこに住むのか
- 自宅を売却するのか
- 誰が取得するのか
について早めに検討することが重要です。
相続人から明渡しを求められたらどうなる?
相続実務では、
- 家を相続した相続人
- 引き続き住みたい配偶者
との間でトラブルが発生することがあります。
しかし、配偶者短期居住権が成立している場合、建物を取得した相続人であっても直ちに明渡しを求めることはできません。
一方で、権利期間が終了した後は退去の問題が生じるため、早めに話し合いを進める必要があります。
相続人間で感情的な対立がある場合には、弁護士が間に入ることで冷静な解決につながることも少なくありません。
よくある質問(FAQ)
まとめ
配偶者短期居住権は、相続開始後に残された配偶者の生活を守るための重要な制度です。
自宅を相続しない場合であっても、一定期間は住み慣れた自宅で生活を続けることができるため、転居先の検討や遺産分割協議を落ち着いて進めることができます。
もっとも、配偶者短期居住権には適用要件や期間に関するルールがあり、個別の事情によって判断が分かれるケースもあります。また、不動産相続や遺産分割をめぐって相続人間のトラブルに発展することも少なくありません。
相続後の住まいや不動産相続、遺産分割でお悩みの方は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
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