私が担当した前回のコラム(2013年6月21日掲載)では,遺言の特色や要件等についてお話ししました)。
今回のコラムでは,「エンディングノート」についてお話しします。
エンディングノートは,人生の最期に備えて,生前に作成しておくノートのことで,文房具店などで市販されていますし,インターネットでダウンロードできるものもあります。
種類によって中身が異なりますが,主に,自分の経歴,家族やペットのこと,友人や知人のこと,病気や治療・介護のこと,自分の葬儀やお墓・法要のこと,自分の財産や負債,遺言のこと,家族などへのメッセージを自由に書き込めるようになっています。
エンディングノートを作成することで,自分の生きてきた道を振り返り,財産や負債も含めて自分の現状を整理することができますので,備忘録としても使えますし,将来の遺言作成の下準備にもなります。また,友人や知人の連絡先,介護や葬儀などの希望を書いておけば,いざというときの備えになりますし,家族などの大切な方に感謝のメッセージを残すこともできます。
エンディングノートの多くは,遺言の有無,作成年月日や保管場所を書き込めるようになっていますが,遺言自体は別に作成することを勧めています。
これは,前回のコラムでお話しした「遺言の要式性」と関係があります。
遺言は,遺言を残して亡くなった方の真意を確保するため,民法が定めた方式に従って作成されなければなりませんが,エンディングノートは,項目がチェック式になっているなど,方式のしばりがなく,自由に書き込めるスタイルになっています。
そのため,エンディングノートでは,民法で定めた方式に従って遺言を作成することができず,遺言としては無効とされる恐れがあるからです。
したがって,エンディングノートには,遺言の有無など,遺言に関する情報を書き込むだけにし,自分の財産(遺産)の分け方などに関しては,遺言を別に作成するようにしましょう。
遺言の作成について,疑問点等ありましたら,当事務所にご相談ください。
執筆者:山下江法律事務所 弁護士 田中 伸